<秋の七草>
秋の野の花を詠む。
萩の花 尾花 葛花 なでしこの花
をみなへし また藤袴 朝顔の花
芽之花 乎花葛花 那麦志 又藤袴 朝皃之花
(山上憶良 巻八・1538)
秋の野に 咲きたる花を
指(および)折り かき数ふれば
七種(くさ)の花
(山上憶良 巻八・1537)
調子の良い旋頭歌(せどうか)五七七五七七 、歌体のリズムにうまく乗せている。
秋の七草は、山上憶良の詠んだこの二首 後生に長く伝承される七草の選定は、
七夕の夜に供える七種の草花を撰んだことに由来する
朝顔の花→ききょう→むくげ→昼顔の説
そのあと薬用植物として輸入されたのが朝顔
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はぎ(萩)
宮城の萩 と違う
指進(さしずみ)の 来栖(くるす)の小野の
散らむ時にし 行きて手向けむ
大伴旅人 巻6−970
万葉集にて一番多く詠まれた。
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ススキ(薄)イネ科 別名:オバナ(尾花),カヤ(萱)
我が背子(せこ)は
仮廬(かりいほ)作らす草(かや)なくば
小松が下(もと)の草を刈らさぬ
巻1 11 中皇命
(ナカツスメラノミコト)
人皆は萩を秋と言ふよし
我は尾花が末(うれ)を秋とは言はむ
巻10 2110
中秋の名月にススキを飾る
単なる風流ではなく、そこには古い農耕儀礼が
底流しているとみられる。
中秋の名月は芋名月とも呼ばれる。この芋は
サトイモ。台湾のヤミ族はサトイモと同類の
タロイモを水田で作り、儀式用に収穫すると
その上にススキをさす。
収穫の魔よけにするのである。
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クズ(葛) マメ科
河原や野原で,他の木などにからみついて繁茂。
蔓は強靭で,民具を作るときの材料。
根からは葛澱粉(クズコ:葛粉)が採れる。
根はカッコン(葛根),漢方薬に使用(葛根湯)。
真葛(まくず)原 なびく秋風 吹くごとに
阿太(あだ)の大野の 萩の花散る
作者未詳 巻10−2096
阿太は吉野川沿いの地名 鵜飼いで有名
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ナデシコ(撫子) ナデシコ科 石竹草(ナデシコ)
別名:ヤマトナデシコ(大和撫子),カワラナデシコ(河原撫子)
なでしこは 秋さくものを 君が家の
雪の巌(いわほ)に咲けりけるかも
巻19 4231 久米朝臣広縄
野辺見れば 撫子の花の花咲にけり
我が待つ秋は近づくらしも
巻8 1972
大伴家持がもっとも愛した花である
秋さらば 見つつ思(しの)へと 妹が植ゑるし
屋前(やど)の石竹 咲きにけるかも
大伴家持 巻3−464
集中二十六首の撫子の歌があるが実に
十一首が家持の歌である
奈良朝以前の歌は一首もないほどに徹底して
後期万葉に愛された花である
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オミナエシ(女郎花) オミナエシ科
手に取れば 袖さえにほふ 女郎花
この白露に 散らまく 惜(を)しむ
作者未詳 巻10−2115
オトコエシ(男郎花)もある。
秋の七草というのに,ずいぶん早く咲くものだと驚く
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フジバカマ(藤袴) キク科 別名 蘭草
葉が三裂するのが特徴。不思議なことにこの花は集中
憶良が七草に取り上げただけで前例もなければ、後に
真似する者も居ない。にもかかわらず代表的な七種の
中に加えたのは彼独特の趣向としか思えない。
茎や葉が乾くと芳香を発する。
蘭香(さわあららぎ)沢蘭(サワヒヨドリ)と間違えられる
萩の花 尾花葛花 撫子の花
女郎花 また藤袴 朝貌(あさがお)の花
山上憶良 巻8−1538
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アサガオ(朝顔) ヒルガオ科
ノアサガオ(野朝顔),ヒルガオ(昼顔)ヨルガオ(夜顔)
万葉集にカオバナ(容花)
「和名抄」阿佐加保 キキョウ ヒルガオ
ムクゲ 夏露草 鏡草
アサガオは(桔梗)万葉集に五首登場するが
謎の花である
また薬用の輸入種
朝顔は朝露負(お)いて 咲くといへど
夕影にこそ 咲き増さりけれ
巻10 2104 作者未詳
古代中国では高価な薬で、牛と取り引きされたという。
漢名の牽牛(ケンギュウ)は、それにちなむ。
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