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届いたプレゼントと手紙。枯れて花びらは落ちてしまったけれど、大切にしまってある=仙台市泉区の村山さん方で
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最初はマーガレットだった。門扉の下に、そっと置かれていた。3年前の初夏。
それからずっと、人知れず、季節の花が届くようになった。
仙台市泉区の小高い丘の上の住宅街。村山美恵さん(60)は、門扉を開けるのが
いつも楽しみ。花は、忘れたころに届く。
春はツクシやタンポポ、秋には野ギクやクズの花。すべて野辺に咲いている野草で、
近くで摘んできた感じ。だから、冬には少なくなる。
はじめは花だけが置かれていた。次第に、クローバーが三つ編みになっていたり、草で束ねた
「花束」がホタテの貝殻の上に置かれていたり。ドングリにようじを刺してコマになっていたこともある。
昼や夕方に置いてある。でも、不思議と送り主には遭遇しない。
2年前、村山さんは4カ月入院した。その間、花を受け取ることができなかったから、もう届かないかと思っていた。
でも、退院してまもなく、きれいに編んだシロツメクサの輪が置かれていた。プレゼントは、その後もずっと途絶えない。
謎が解けたのは、去年5月。マーガレットのわきに、わら半紙を丁寧に巻いた手紙が添えられていた。
「☆ごしんせつな方へ☆ まえはありがとうございます できればこれからも恩返しさせてください」。
女の子が深々とおじぎをした絵が、脇に描かれていた。
そう言えば……。3年前の初夏、村山さんの自宅前で小学1年生ぐらいの女の子が1人、一生懸命に背伸びをして、
ほうの木の葉を取ろうとしていた。
「ご家族は何人?」と尋ねると、女の子はモジモジして、うつむいたまま、小さな手のひらで「5」と示した。
村山さんは5枚の葉を渡してあげた。
最初のマーガレットが置かれたのは、その翌日だった。
あの子はどんな顔だったろう。いまは、もう4年生ぐらい。街ですれ違っても気づかないかもしれない。
お礼を言えないのが、村山さんはもどかしい。
いままでに届いた花の輪は、しおれても大切に家の中に飾ってある。
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