正午の茶事

 

茶事の当日 寄付にて

 

さまざまな茶事のなかでも「炉正午の茶事」が他のすべての茶事の基準となるもので、

http://www.omotesenke.jp/chanoyu/p/5_3_2_1_b.jpg以下この茶事の手順の概略をみることとしましょう。

茶事の案内
通常書状をもって客に案内状を送ります。

日時、茶会の主旨、また当日の連客などを

伝えます。
前礼
案内を受けた客は早速来否を亭主に伝えますが、茶事の前日には客の代表が

亭主をたずね、あらかじめ茶事の礼をのべ、客の数などを伝えます。

DSCN2924これが「前礼」です。
茶事の準備
亭主は露地・茶室を清め、庭の掃除、中門の整備、

つくばいの清掃、簾の用意

などの他、茶室に用いる「茶の道具一式」も

よく吟味しなければなりません。
茶事の当日
さて、茶事の当日となれば、客は「寄付」とよぶ

表千家不審菴:茶事の案内状一室で衣服を整え、ここで

通常、亭主の補佐役の半東の運ぶ「湯」を頂きます。

こうして客一同は心を静めて亭主の案内を待ちます。

やがて客は「外露地へ」との亭主の案内をうけて、

露地ぞうりを履いて

外露地へ移り、外露地の腰掛にかけて円座をしき、

煙草盆を客の間に置いて

亭主の「迎え付け」を待ちます。

 

表千家不審菴:迎え付け初座

 

「迎え付け」
亭主はつくばいの水を改めたあと、露地の中程の中門の戸を開けます。

亭主が中門に歩み寄るのをみた客は一同腰掛を立って、正客より順に中門へ

進み出、つくばってお互いに黙って礼をかわします。

これが「迎え付け」です。

このあと、亭主は中門を手がかりだけ開けて、

茶席へ戻ります。

客一同も中門を通ってつくばいにて手を洗い

口をすすいで、茶席へ通ります。

表千家不審菴:迎え付け客は席に入るとまず床の間の掛物を拝見し、炉や釜、

またの飾りなどを

拝見したあと、床の間を上座として、正客より

順次席につきます。

末客は入席すると戸口を少し音をたてて閉め、

全員の席入りが終ったことを

亭主にしらせます。
「初炭」
客の入席がすむと亭主は出て客との挨拶をかわし、

表千家不審菴:迎え付けやがて炉の炭をつぐため

炭点前を行います。

「初炭」といわれます。

炉に炭をつぎ、香をたいて、客一同香合

拝見をすませます。
「懐石」
次に亭主は客に「懐石」をもてなします。

通常一汁三菜(汁一種、向付・煮物・焼物の

三種の料理)といわれ

表千家不審菴:迎え付け野菜・魚鳥の肉を用いた料理がもてなされます。

近頃は懐石の内容をふやし野菜などの煮合せ

や酒の肴を加えて客に

酒飯のもてなしをすることが多くなっています。
「菓子」
さて「懐石」を終ると、亭主は主菓子を客にすすめます。

17「茶事」では主菓子は「縁高」とよぶ五つ重ねの重箱の

形のものに盛られ、

黒文字の楊枝が客一本ずつ用意されます。

客一同は縁高から主菓子を懐紙にとり、頂き終り、

これで「茶事」の「初座」

終ります。客は茶室を出て、庭(通常内露地

内腰掛へ移ります。

http://www.omotesenke.jp/chanoyu/p/5_3_4_1_b.jpgこれを「中立ち」とよんでいます。

 

後座

 

「中立ち」


客は正客より露地に出て内露地の内腰掛にて

しばらく休息します。

その間に、亭主は茶席を掃き突上窓を一段と

この中立ちを省いてしまい、続けてお薄のお点前に

入ることを「続きお薄」という。ちょっとした気遣い)

濃い茶とお薄をいっしょにやってしまう。

亭主、または正客のほうから、どちらが申し出てもかまわないし、

      夜咄の茶事や朝茶事以外でも、客から続き薄茶を所望することもあり。

これは、亭主に手間をかけさせないようにとの客の配慮。

亭主の挨拶

「○○○なので続いてお薄を差し上げたい」

「時が移りましてはご迷惑になりますので、このまま続けてお薄をさしあげたく存じます。」

「○○○なので続いてお薄をお願いしたい」と お願いするわけです。

「時が移りましてはご迷惑になりますので、

このまま続けてお薄をさしあげたく存じます。」という感じ。

夏に行われる朝茶事であれば、

「日が高くなると暑くなってきますし、このまま続けてお薄をさしあげたく存じます。」、

冬に行われる夜咄茶事であれば、

「遅くなると夜更けて足元も帰りも危なくなってきます、このまま続けてお薄をさしあげたく存じます。」

亭主はそれに配慮する。
客から続き薄茶を所望

「後炭を省略して続きお薄ではいかがでしょうか」

この場合、亭主は省略しては折角いらして頂いた客に失礼にあたるとの思いから一端辞退しますが、

客がそれでもと勧めれば「お言葉に甘えてお薄を続けて差し上げます」というようになる

賓主互換」という禅語の意味。亭主をして仕事の大変さを体感することで、

客になった時に亭主を思いやる余裕が生まれ、

そしてお互いに尊敬し感謝し合える状態になることかなと。

この見極めや対応が亭主や客の精神性、人間性を表すということになる。

茶事に移ろう。

 

高く開けます。

茶室にては、床の間の掛物を巻取り、床の

間正面の壁に花入をかけ花を生けます。

炉の炭の火の様子(火相ともいう)や釜の湯の

たぎることをたしかめ、水指茶入

飾り、濃茶の用意をととのえます。

亭主は茶席の用意を終えると、銅鑼や喚鐘を

表千家不審菴:中立ち打って客に入来をうながします。

「濃茶」

やがて客は内腰掛から二度目の席入りをします。

客が入席を終ると、亭主の半東役は障子の外に

かけられていた簾(すだれ)を

取りはずし、茶室は一転して明るくなります。

ここで濃茶が亭主によって点てられます。

「茶事」の眼目はこの濃茶の一服にあるのです。

亭主は黒紋付の着物に着替えて点前に出ます。

表千家不審菴:中立ち茶室での喫煙は許されず、座ぶとんも使いません。

万事緊張した雰囲気の内に一碗の濃茶が客一同にて

のみまわされます。

濃茶はことに亭主が注意して味や香りの良い品種を

用意しているので、先の主菓子

と共に濃茶の銘や詰(造った人や場所)について正客は

亭主にたずね、

亭主の心入れに礼をのべます。

表千家不審菴:中立ち

「後炭・薄茶」「退出」

濃茶の点前が終り、茶入・茶杓仕覆などの拝見

(三器の拝見)がすむと、再び炉の火を直し

後炭という)、薄茶を客にすすめ、道具の

箱書付なども拝見に出しつつ、

薄茶をもって「茶事」は終ることとなります。

薄茶は厳粛な濃茶とは反対に、御亭主、

客双方うちとけながら明るくなごやかなうち
に一服頂き茶事が終わる。

客は煙草盆・座ぶとんなど整理して返し、

22そのあと茶室を出ます。

客は茶室の前にて、亭主の見送りをうけて一礼を

すませ、そのあと露地を歩み、

「寄付」へ戻り、亭主のもとを去ります。

翌日客の代表は亭主方への客一同の礼を伝えます。

「後礼」といいます。

 

茶室の花

 

茶室に生けられる花には、その茶事の季節に、その時期に

咲く花を使います。

茶室の花は茶事を構成する「季節感」をかもし出す最も

直接の役割を果たします。

およそ茶事や茶会の主題というのは、根底に季節感を

もっており、月々の季節の推移と時々の年中行事が

組合され、一年を通じての茶事の興趣をもりあげています。

花は季節感を直接に茶室へ運び、自然の美と、

花の生命の短くはかないことを教え

るものです。

「花は時の賞玩」と古人もいい、花の命は短い

からこそ、人々に生の喜びを

さそうのだとしました。


月々・季節の花

口切の茶11月)は茶の世界の正月として

立冬のあと炉の時期半年間の最初に

当りますが、この頃は椿の花も咲きはじめ炉の

花の代表とされます。

多くの種類をもつ椿の花は、冬から春にかけての

花の王者といえましょう。

利休は白い花を好みとしたといいますが、椿の紅白の

取合せもよくみられます。

また5月初め立夏を迎え、風炉の時期が半年に

わたります。

夏の花として木槿の花が代表といえます。
炉の時期の花の一部をみましょう。

椿も種類多く、そのなかにも、初嵐・白玉・曙・西王母・

加茂本阿弥などの名が

よくみられます。

寒菊・ろう梅・白梅・桃・にわとこ・寒牡丹などが炉の花

としてよく使われます。

                                                                                         風炉の時期の花の一部をあげてみましょう。 

都忘れ・泡盛草・花菖蒲・夏椿・木槿(むくげ各種)・

撫子・水引草・貴船菊などがみられます。
茶室に生ける花はその季節の花を生けるのが最も

ふさわしく、ことさらに珍しい種類

の花を追うのはかえって茶事の本旨から遠ざかる

ものといえます。

 

 

06/07/16現在 池之端 江戸千家は 表千家 (堀内宗心)の教本で稽古中

http://www.omotesenke.jp/index.html 表千家

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