「あがりこ」 「蘖(ひこばえ孫生え)」
樹木の切り株や根元から生えてくる若芽のこと。
森の陽ざしや雨が雪を溶かし、足で踏んでもぬからぬ固雪に変わる。
村の人々はかつてこの時期、ソリを引いて奥深いブナの森に盗伐に入った。
昔は天領で自由に伐った。
今は国有林となり、胸高13センチ以上の木を伐ると盗伐になる。
監視の目をのがれ、雪の上から突き出たブナの枝を伐り落し、
薪や鍛冶炭にしてソリにつけ、部落に持ち帰った。
薪や炭は町で売りさばいて日用品を買い、生活のたしにした。
この行為は、燃料が薪や炭から石油に変わる明治の終わりごろまで続いた。
やがて伐られた部分は癒合し、大小のグロテスクなコブとなる。
伐られた部分から萌芽し、生長してゆく。
村人のこの行為は長年にわたって繰り返され、ブナのモンスターになった。
こうしたブナの樹を地元では「ブナのあがりこ」とよぶ。
それは、ブナと人間とが豪雪とのかかわりあいのなかから生みだした
東北独特のブナの姿である。
以上のような解説がなされていますが、ここ中国地方の臥龍山のブナ林にも
「ブナのありこ」と同じようなブナが見られます。
中国地方ではたたらが発達した関係で、砂鉄を溶かす燃料の木炭を生産するために
伐採されたと考えられます。
たたらとは
たたらとは 日本古来の製鉄法のことを言います。
以下、日立金属株式会社のHPに掲載されている「たたらの話」から引用します。
たたら製鉄は鉄原料として砂鉄を用い、木炭の燃焼熱によって砂鉄を還元し、
鉄を得る方法です。たたら製鉄には2つの方法があります。
1つは砂鉄からいきなり鋼を作るケラ押し法(直接製鉄法)、
もう1つはズク(銑鉄)を作ることを目的とするズク押し法です。
ケラとは、鋼のもとになる塊で、ご存知のように鋼は叩いたり、伸ばしたりして
鍛えることができ、しかも焼きを入れて硬くすることができますので、
日本刀をはじめ、刃物、工具などに用いられてきました。
ズクは炭素量が高く、溶け易いので鋳物にも用いられますが、大部分は大鍛冶場
(おおかじば)に運ばれて炭素を抜き、左下鉄(さげがね)と呼ばれる鋼や、
さらに炭素を下げて軟らかくした包丁鉄にされました。
また、「木炭」については次のように解説されています。
一般使用の木炭は、高温度(約1000℃)で焼いた堅い白炭、低温度(400〜800℃)で焼いた軟らかい黒炭、
それに消炭に分けられますが、たたらで用いる炭は少し違っていました。
たたらでは炉で鉄を製錬するのに用いる炭を大炭、鍛冶に用いる炭を小炭といいます。
大炭は黒炭に似た方法でつくりますが、焼く温度がさらに低く、半蒸のものが多く、
炭としての質は劣悪なものです。
それは固定炭素が少なく(60%以下)、揮発分が多い(30%以上)方が、火力
を上げるのに都合が良かったからです。
「鉄山秘書」によれば大炭には松、栗、槙、ブナが良く、しで、こぶし、桜は悪く、
椎、サルスべリは最悪としています。
そのほかクヌギ、楢、雑木も良く使われています。
小炭としては松、栗、栃、杉は至極上々で、しで、椎、槙、樫(かし)、
橿(もちのき)は良くないとされました。
小炭の焼き方は地面を掘り込んだ凹地に木を積み、火をつけ、燃え尽きんとする時に柴木、
笹や土を打ちかけて蒸し焼きしました。
小炭の場合、生木からの歩留は約10%、大炭の場合は約20%です。
「一度伐採した木は、その後40年は決して切らない。」
「山菜が三つ生えていたら、二つは採って一つは残す。」
秋収穫後の刈り取られた稲の株より 5月の田植えのように 切り株より
発芽する蘖(ひこばえ)(孫生え)孫が生まれる。
眠っていた芽(休眠芽)が起き出したもの。
水分や養分の吸収力があり成長が速いのが特徴
イネの場合、収穫(刈り取り)後の切り株から生える2番穂のことを指す。
気候変更により稲作には
最悪な敵
田んぼの養分を吸収してしまう。
東日本大震災
▼北上する桜前線が人を励まし慰めた。
岩手県大槌町の花見会で、樹齢100年の根元のひこばえに小さな桜が咲いていた。
かがみ込んだ小国ヤスさん(79)は避難所暮らしが続く。
「上ばかりじゃなく、下を向いて見つけるものだってあるんだなぁ」。
春風はまだ瓦礫(がれき)のにおいだ。
天声人語 朝日新聞 2011年4月30日(土)付
臥龍山http://futarinoyakata.web.infoseek.co.jp/agariko.htm
鳥海山http://www.kyoboku.com/mori/tohoku/agariko.html